ビットコインだけが“金利ゼロ”を正当化できる
- Daniel Tanaka
- Sep 26
- 4 min read
Updated: Sep 27
市場は流動性プールです。どの財も、このプールの中でしか呼吸できません。ビットコインもゴールドもそうです。
物質としてのゴールドのエントロピー耐性は劣化しないのでほぼ無限ですが、市場に入った瞬間、そのエントロピー耐性は流動性プールのエントロピー耐性に引きずられます。つまり、流動性プールを基準にすれば、ビットコインとゴールドの「耐性」は実質的に同等だということです。
分かりやすく例えると、取引があと1回しかできない極限状態にある場合、水をゴールドと交換するインセンティブは殆ど存在しなくなる、とでもいえばわかりやすいでしょうか?あと30分で人類が滅亡してしまうのなら、ゴールドよりも水の方が欲しい人が多そうですよね。
つまり流動性プールそのものが死を迎えるという状況で、ゴールドのエントロピー耐性はプールのそれと同じ値になるまで繰り下げられるということです。
もし仮にこの仮定が正しいとすると、何が両者を決定的に分けるのかという問いだけが残りますよね。そして、その答えは限界費用にあると思います。
ビットコインはマイニングが終われば、追加供給がゼロになります。増やせないものは、増やそうとした瞬間に限界費用が実質無限になります。
対してゴールドに関しては、採掘技術は革新され続け、採掘可能性は技術と共に広がり、地球外の資源にもアクセスし得ます。供給は固定ではありません。限界費用は無限には至らず、ビットコインと比較すると劣後します。
そして、もうひとつ決定的なのはトラストの構造です。ビットコインは真偽判定を誰でも瞬時に実行できます。自己保管がデフォルトで、預けるかどうかは選択にすぎません。
自己保管の場合、ビットコインには金利という名の「お守り料」は本質的に不要です。一方でゴールドは真偽の判定に専門家と装置が必要で、実質的に最後に加工した組織を信頼せざるを得ません。安全に保管するにも倉庫や保険、管理が不可欠で、現実には預託に流れやすくなります。トラストが介在すればコストが生まれ、その対価として金利が上乗せされます。守るために恒常的なコストがかかる構造は、結局「金利が必要な資産」をつくり出すということです。
法定通貨も同様です。金利がつくということは、どこかに崩壊の可能性が織り込まれているということです。米国債をリスクフリーと呼ぶ慣習はあっても、国家や制度は平然と変わり得ます。永遠に続く国家は人類史には存在しません。
ステーキングも株式も、見かけのリワードは心地よく見えますが、本質は「崩壊リスクの引受料」だと考えます。金利がつくものは、必ずどこかで壊れ得ます。したがって利回りは“安全”の証拠ではなく、“壊れうる”ことの価格だと受け止めています。ゴールドに関しては物質そのものの崩壊ではなく、騙され得ることへの対価という扱いになります。
ここまで整理すると、結論は明確ですね。ビットコインだけが金利を必要としないのです。むしろ、金利をつけないほうがビットコインの本質に忠実だともいえるでしょう。
供給は増やせず、真偽は自分で検証でき、保管は自分で完結できる――他者に依存する恒常コストを必須としない設計だからこそ、「利回りで釣らなくても成立する貨幣的需要」が存在し続けます。
利回りがないから劣るのではありません。利回りを差し出さずとも、希薄化耐性と検証可能性だけで価値が維持される――その事実こそがビットコインの財としての強さの証明です。
もちろん、ビットコインにも学習や鍵管理の負担はあります。ただしそれは「自分の努力」へ還元可能なコストであり、他者へ永続的に支払う保管料や鑑定料とは性質が異なります。
ネットワーク手数料や価格変動はつきものですが、それらは使用コストや市場ノイズであって、崩壊リスクのプレミアム=金利とは別の層に属します。
増えないこと、誰でも検証できること、そして預けなくても所有できること。この3点の組み合わせによって、ビットコインは「金利ゼロ」を堂々と正当化します。
私は金利のつかないビットコインだからこそ、孫への継承に値する特別な財産だと確信をもってビットコインを保管したいと思います。