お金0.0 ― マネーは進化しない
- Daniel Tanaka
- Oct 25
- 2 min read
お金は時代と共に進化してきた――そう思っていないだろうか?
私はその考えに反対する。
お金は進化していない。5万年前、あるいは10万年前。人類が「認知革命」を起こして以来、ずっと同じルールのもとで運用されている。
というよりも、お金とは言語の裏機能である。そして、言語が進化していない以上、お金もまた進化していないのだ。
虚構としての等価
お金の本質的なルールは一貫している。
物体Aと物体B、あるいは物体CとサービスD、サービスEとサービスF、さらには信仰と権利など――人類はあらゆるものを虚構上の等価として見なし、交換してきた。
交換が連続すれば、そこにエントロピーと限界費用の差によるアービトラージの機会が必ず生まれる。
そしてそれに気づいた者が必ずアービトラージする。
結果として、流動性の澱みは解消され、最も流動性の高い物体AやサービスFや信仰などが、摩擦を起こさない通貨として機能し始める。
「進化したように見える」だけ
技術の発展や社会風習の変化によって、「何が最も摩擦を起こさないか」は時代ごとに変わる。だから人は、お金が進化してきたように錯覚する。
でもそれは間違いだ。
なぜなら、特定の財だけを取り出して、現代の通貨を排除したマーケットを作っても、マーケットはマーケットとして普通に機能するからだ。
「等価」という虚構は驚くほど柔軟で、いわゆる「通貨」がなくなっても関係なく機能し続ける。
虚構という言語の一機能こそがお金の正体なのだ。
お金はずっとバージョン0のまま
お金は進化しない。
ずっとバージョン0のまま、人類と共にある。
形を変えても、本質は変わらない。
貨幣、紙幣、デジタルマネー、ビットコイン――どれも「虚構の等価」という同じエンジンで動いている。
お金とは、言語が作り出した最初の拡張現実。
そしてそのコードは、一度もアップデートされていない。


