Expand the Pool―市場で僕らがやるべきこと
- Daniel Tanaka
- Oct 7
- 3 min read
常々申し上げていますが、私はマーケットは流動性プールだと考えます。そしてこのプールの本質はリキッド、すなわち Wants と Needs の集合体です。
Wants と Needs は本来ばらばらに点在していますが、マーケットはそれらを部分的に集め、流れをつくります。大きな流れになるものもあれば、小さな流れのまま終わるものもあります。
小さな流れが大きな流れに引き寄せられて結合していくという点では、まるで磁石のようです。しかも現代は海路・空路・陸路・電路で結ばれており、世界規模で流れの連結が緩やかに進んでいます。
その証拠に、私たちは今や世界中の多くの場所からほぼ何でも購入できるようになりました。流動性プールが拡大すればするほど、参加者全員が恩恵を受けます。交換の利便性が高まり、物資やサービスへのアクセスが向上するからです。
ここからは、このプールを攻略する4つの方法をご説明します。
1) 流れのよどみを解消すること(Cleaner)
停滞するリキッドは、水が停滞すると腐るのと同じようによどみます。よどみが濃くなるほど、リキッドは流れにくくなり、最悪の場合はプール自体が縮小・消滅しかねません。ですから、売買が細っている領域に入り、積極的に両サイドの約定を促すことは、リキッドの滑らかさを高める重要な行為です。意外に思われるかもしれませんが、これは自分のリキッドを拡大するという形で報酬につながります。
具体例:マーケットメイカー、古物商、アウトレット、在庫圧縮・再流通の仲介など。
2) 流れのサイズ自体を大きくすること(Builder)
プールの水量を増やせば、リキッドは流れやすくなります。もちろん、Wants/Needs が受け入れない財を無差別に投下しても成功しません。しかし、受け入れられる財を見つけ、それを適切にプールへ投入できれば、流動性の拡大という巨大な価値の創出を担えます。
具体例:起業家による新市場の開拓、社員・フリーランスとして自分の時間やスキルを売ることなど。
3) 流れと流れをつなぐこと(Bridger)
プールは世界中に点在しており、すべてがグローバルに連結しているとは限りません。そこで、断絶をまたいで連結を促すと、流れは加速し、プール自体のサイズも拡大します。この橋渡しは、自身の流動性拡大という形で見返りを生みます。
具体例:貿易商・商社、越境EC、物流・決済・情報のハブ化など。
4) 流れの波を読み、それに乗ること(Surfer)
最後は、主に投資家・投機家が行うアプローチです。プール内の流れの変化を読み、拡大が見込まれる財を先回りして取得する、あるいは縮小を見込んでヘッジや空売りで備えることで、自身の流動性を高めます。これは①の「よどみ解消」と重なる部分もあり、厳密な線引きは難しいところです。それでも、趨勢の見立てとリスク管理を組み合わせることで、巨額のリキッド獲得につながる有効な手段になります。
まとめ
マーケットは流動性プールです。
リキッドとは Wants/Needs の集合体です。
攻略の4手は、よどみ解消/サイズ拡大/連結/波乗りです。
どの戦略から始めてもかまいませんが、実務では小さな循環を継続することが成果につながりやすいです。最終的に目指すのは、プール全体の水量・水質・流速を改善し、参加者全員の便益を引き上げることといってよいでしょう。
合言葉は、Expand the Pool です。
私たちは流動性プールから逃れられません。戦い方を学び自身の流動性を拡大し、プール全体に貢献しましょう。


