OVaultとは何か ― LayerZeroが切り開く次世代の信用創造
- Daniel Tanaka
- Sep 12
- 3 min read
OVaultは、Vault流動性を統合し、どのチェーンからでも即座に利用可能にする革新的仕組み。これは単なる技術的進化ではなく、DeFiにおける「流動性=生命線」を握る新しい信用創造の形を意味する。
2025年9月10日にXにて発表された。
OVaultとは?
OVaultは、Vault流動性を一元化し、あらゆるチェーンから利用可能にする仕組み。従来、Vaultはチェーンごとに分断され、流動性は細かく散らばっていた。Valutとは、ユーザーが預けた資産をまとめて管理し、スマートコントラクトで自動的に運用する金庫のような仕組み。
OVaultは本体のVaultをひとつに集中させ、各チェーンのユーザーに OVault Share Token を発行する。OSTはどのチェーンでも同じ価値を持つ。結果として、流動性そのもの一か所に集中はするが、実際の利用局面ではユーザーは分散するという理想的なDeFi運用の形が実現する。
LayerZeroとは?
LayerZeroはクロスチェーン通信の基盤。各チェーンに配置されたEndpointを通じて、メッセージと資産移動を安全に中継する。
OracleとRelayerが独立して検証を行うため、セキュリティは高い。Oracleは「このブロックで確かにイベントが発生した」という“見出し情報”を運ぶ新聞配達員、Relayerは新聞の“本文コピー”を持ってくる宅配便のようなイメージ。OracleとRelayerが独立して同じ事実を確認することで、不正を防ぐ。
OVaultはこのLayerZeroの設計によって初めて成立する。
ERC-4626とは?
ERC-4626はVaultの共通規格。調べる必要はないが、LayerZeroのドキュメントを読むと出てくる規格。
レンディングプール、ステーキング、イールドトークン、さらにはDEXの流動性プールまで、DeFiの根幹はVaultで構成されている。OVaultはこのVaultをクロスチェーンに拡張し、チェーン毎に分断されていた流動性を統合する。
インパクトの大きさ
LayerZeroはOVaultを「DeFiにとって1,100億ドルの解決策」であり「TradFiにとって3.25兆ドルの解決策」と表現している。
実際にローンチ初日から、Ethena、Resolv、Hyperdriveの3パートナーにおいて90億ドルの資産が預け入れられている。これは単なる新サービスではなく、次世代の信用創造の始まり。預けた資産をもとに流動性を引き出すのは部分的な信用創造であり、銀行が現金を保管しつつ、預金証書(IOU)を発行して経済を拡大する仕組みと本質的に同じ。
LayerZero専用のインターフェースがある訳ではなく、統合されていることからLayerZeroを利用しているかどうかは目視で判断不可。例えばEthenaでUSDeをステークしようとすると18チェーン上のUSDeを選択できるようになっている。

Wormhole・Axelar・LayerZeroの比較
LayerZeroには主に2つの競合がいる。利便性やスピードでは競合が勝つかも知れないが、流動性を高めるという一点においてLayerZeroの根本思想が最も的確なのではないかと感じる。
Wormhole:各国にバラバラの銀行を置き、それぞれで預金させる。流動性は分散する。
Axelar:各国の銀行を連絡回線でつなぐ。相互接続はできるが、銀行は独立したまま。
LayerZero:世界にひとつの巨大銀行本店に預金を集中させ、各国の支店で同じ証書を利用できる。
この比喩が示す通り、LayerZeroだけが流動性を一元化しつつも、実利用局面ではその窓口を分散させることができる。
流動性こそ決定的要因
本サイトのテーマでもある流動性の拡大こそが、最終的な勝者を分つ決定要因だと考える。流動性が集まればスリッページは減り、取引効率は上がり、さらに新たなアプリがその基盤の上に構築される。
高い流動性はさらなる流動性を惹きつける。この正のフィードバックループを作れるのはOVaultを持つLayerZeroではないか?
結論
OVaultはVaultの流動性を統合し、あらゆるチェーンから即座に利用可能にする革新的仕組み。LayerZeroはその基盤として、DeFiにおける資本効率を最大化し、TradFiの巨大な資産を取り込む可能性を持つ。WormholeやAxelarはチェーンを接続するにとどまるが、LayerZeroは流動性を拡大し、次世代の信用創造の中心となると予想。


