価値は「流動性」と「変化の度合い」で読む
- Daniel Tanaka
- Oct 1
- 2 min read
私たちが日常で「あれは価値がある」と感じるとき、その多くはどれだけスムーズに他のものへ交換できるか——つまり「流動性」のことを想定しています。
ここでいう流動性は価格のことではありません。
流動性は市場参加者の多さ、マーケットの厚み、約定の速さなど、交換のしやすさ全体を指します。その全体像を俯瞰する見取り図としては、個別価格よりも時価総額が役に立ちます。価格が高い=流動性が高い、とは限らないからです。
一方で、「価値」をもっと根源的にとらえるなら、私はそれを「変化の度合い」として定義します。この視点に立つと、現物財と虚構財では価値の基準が反転していることが見えてきます。
1. 現物財:変化を生む力が価値
石炭より石油、石油より原子力へ——取り出せるエネルギーが増えるほど、社会に与える現実の変化は大きくなり、価値は高く評価されます。ここには物理的エネルギーだけでなく、人的・精神的エネルギーも含まれます。たとえば同じ工具でも、それを扱う技能が高いほど生み出せる変化は大きく、価値は増大します。
現物財=「どれだけ世界を動かせるか」という変化の生成力
2. 虚構財:変化に耐える力が価値
古代の遺跡が当時のまま残るほど貴ばれるように、虚構財にとっての価値は「変化しない時間」をどれだけ保てるかに宿ります。オリジナルの輪郭を損なわず長期にわたって一貫性を保つこと自体が価値として認知されます。
虚構財=「どれだけ変化しないでいられるか」という一貫性
3. 2つの物差しで立体化する
現物財:変化を生む力
虚構財:変化に耐える力
この2座標で見ると、「価値」と「流動性」の関係も整理しやすくなります。
経済の現場での「価値」=実務上は流動性(交換のしやすさ)に近い感覚
本質的な「価値」=対象が持つ変化の度合い(生む/耐える)の総体
まとめ
要するに、経済の現場で語られる「価値」は、実務上は交換のしやすさ——すなわち流動性として捉えるのがわかりやすいです。一方で、本質的な価値は「変化の度合い」として定義でき、ここでは現物財と虚構財で評価軸が反転します。
現物財はエネルギーや技能、速度によって「どれだけ現実に変化を生み出せるか」が価値となり、虚構財は不変性や一貫性、保存性によって「どれだけ長く変化に耐え、その姿を保てるか」が価値となります。
この2つの物差しで対象を見ることで、なぜビットコインに価値があるのかより正確に見極められるのではないでしょうか?
